【感想】ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』

J・P・ホーガンをいくつか読んできましたが、ここで原点に立ち返って
『星を継ぐもの』を再読。やっぱり最高に面白かった!
あらすじ
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。生物学的には現代人とほとんど同じにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。いったい彼の正体は? 謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。調査チームに招集されたハント博士は壮大なる謎に挑む……。ハードSFの巨匠ホーガンのデビュー長編にして、不朽の名作。第12回星雲賞海外長編部門受賞作。/解説=鏡明
【以下ネタバレ注意!】
感想
学生時代に夢中になって読んだ『星を継ぐもの』にはじまる巨人たちの星シリーズの完結編『ミネルヴァ計画』がついに翻訳された!
ということで、あらためてこの機会にと読み始めたJ・P・ホーガンものなのですが、ここでいよいよ星を継ぐものに突入です。しっかり思い出してから完結編を読みたいですからね。
まだ私がSF小説というものをほとんど読んだことがなかった学生時代に初めて読み、思い切り頭をガツーンとやられたこの一作。それ以来わたしはずっとSF小説における最高傑作は星を継ぐものだ!と言ってきたのですが、それは単なるヒヨコの刷り込みなのか、それとも本当に“揺るぎなきマイベスト1”なのか、それを今一度確かめたい、という思いもあったりします。
さて、星を継ぐものははたしてほんとうにSFの“最高峰”なのか。
やっぱり最高だった!
はい、結論から言います。
最高傑作でした。
いっやー、めちゃくちゃに面白かった!
真相もオチもわかってるのにこんなにも面白いとは。むしろ真相を知ってるからこそ途中途中の仕掛けがよく見えてきて面白いのなんの!
非常によくできたアイデア満載のハードSFであると同時に、悠久の時を超え、太陽系をまたにかけた壮大なスケールのミステリーでもあるこの作品の豪快な構造がよく見えてくる。いやいや、ほんっとよくできた作品です。
壮大なアイデアのマシンガン!
科学で難解な謎に立ち向かい、ただただ判明した事実を見つめ、思い込みを排除し、論理的な推理を組み立て、類推し、結論を導き、意見を戦わせて真実を解き明かす。非常に理詰めのミステリーであり、SFにおけるサイエンス部分の醍醐味をとことん味わわせてくれます。
衝撃の発見が巨大な謎をぶっ壊し、真実に手が届いたかと思いきや、それがまたあらたな巨大な謎の発見だったりする。一つの謎を解き明かすごとに、休む間もなく衝撃の発見がやってくる。
謎をぶっこわすたびに今まで見えていた景色がガラリとかわり、壮大な風景が見えてくる。そのたび世界そのものが変わってしまうような感覚に陥る超ド級のワクワク感。時を超えて繰り広げられる悠久の大ロマン。
ぶっ壊してもぶっ壊しても次々出てくる巨大な謎と、サイエンス的な大興奮に振り回される快感。
この発見、謎、アイデアによる突破、大逆転の、とめどないマシンガン攻撃こそがこの作品の最大の魅力だとあらためて確信いたしました。
いやー、ほんっと息つく暇もないアイデアの奔流。
学生時代に読んでからだいぶん時間がたっており、記憶から細部がほとんど抜け落ちていたということもあって、そういった面でかなり新鮮に楽しむことができたというのも大きかったと思います。
人間ドラマのエンタメとしてもちゃんと面白い!
星を継ぐもののおもしろさはそういうサイエンスフィクションやミステリー的部分だけじゃなく、主人公ハントとライバル?科学者ダンチェッカーの激しく議論をぶつけあい、いつのまにかとっても仲良くなっちゃってたりするドラマ部分にもあったりするんですよねー。
常識的な発想にこりかたまった頭の固い学者先生をやりこめる痛快エンタメみたいな、序盤の流れがまずめちゃめちゃに面白い。
このふたりのぶつかり合いを通じて読者はちょっと小難しい常識的な科学知識をおさらいしたり、あるいは知らなかった人も「そういうものなんだ」と知ることができる仕掛けになっている。
ともすると退屈になりがちな基礎的なお勉強部分が、最高に楽しいエンタメとして食べやすく料理されてるんですねー。
いやー、これはうまい仕掛けです。
そうやってぶつかり合ったハントとダンチェッカーが、ガニメデへの旅の中でめっちゃ仲良くなっちゃってるのも微笑ましいし、一度やりこめられたダンチェッカーが最後の最後、一番おいしい結論を持ってゆくというのも意外すぎる大逆転。
ほんっといろんな意味で飽きさせません。
いわばこのあたりはバディ物的な楽しみがあったりするんですねー。
一見正反対に見えるふたりが最初は反目してぶつかり合ったすえに意気投合。互いの長所を生かして巨大な事態を解決し、いつしか影響しあい、それぞれが成長を遂げてゆく。
思わずニヤニヤしちゃう構図です。
5万年の時が繋がる感動
物語の中心部分は感動成分もかなり強いことが再発見できたのも今回の収穫でした。
学生時代からわたしは感動屋でかなり涙もろいタチだったので昔もそうとう感動してたと思うのですが、だいぶそのあたりは忘れておりました。
5万年前のチャーリーの日記の、引き込まれるような圧倒的な筆致。
自分たちのようではない、もっと意味のある生き方がきっとあるはずだという切々としたメッセージは、そのチャーリーの思いの先に今のわたしたち地球人類があるんだな~と、ハッとさせられるような感触がありました。身の引き締まるような感覚を覚えます。
チャーリーが命を落とした洞窟に立ったハントが覚えた名状しがたい感動。これまたすごいロマンです。5万年というはてしない時を超えて、たしかにその場で起こったドラマを今感じることができる。たしかにここでそれがあったのだという紛れもない説得力。
この物語の中心を流れるのは、こういう遥かな時を超えて押し寄せて来る感動だと確信した一場面でした。
そして到達するラストシーン。5万年前、ほんとに地球にルナリアンは到達していたのだと教えてくれるそのアイテムが、同時に確かに「序章の彼」が到達していたのだと教えてくれるこの感動。
すべては奇跡だと、ほんとうにすごい奇跡のめぐりあわせだと胸のうちが震えてくるものがありました。
2500万年前のガニメアンから始まり、5万年前のルナリアンの悲劇を超えて、今に至る壮大な物語。
いくつもの奇跡が折り重なって、今の地球人類が生み出され、そしてわたしたちがいるのだと。
その奇跡の歩みと、ラストシーンに発見されたあるものとが重なって、えもいわれぬ感動を呼び起こしてくれます。
地球人類へのホーガンの祝福
2500万年もの歩みの末にバトンを受け取った、かけがえのないこの星を継いだわたしたち地球人類。
はたしてわたしたちはここからどこへ進むのか。
ここまでの歩みの先に、手に入れるものは何なのか。
ホーガンの描くSF世界は、暗い未来を予感させないのがまた素敵です。
科学や人類の明日への悲観性は感じられません。
圧倒的な未来への希望、明るさ。科学技術の可能性を信じ、まだ見ぬ明日へのワクワク感がホーガンの人類、ホーガンの宇宙には満ち溢れています。
『星を継ぐもの』では、それは理由のないただの楽観論ではありません。
2500万年前に始まり、5万年前の淘汰の結果獲得できたもの、地球人類という種が勝ち取った、かけがえのない強さがあるからこそなんですよね。
だからこそ地球人類はとっても強く、どんなことがあってもあきらめず、そしてしなやかに問題を解決してゆける。
そう、ハントとダンチェッカーがそうであったように。
それはホーガン流の科学的思考で裏打ちされた「地球人類への最高の信頼と祝福」であるように思います。
ラストシーンで発見され、しかしイタズラだと思われて捨てられたあるもの。
このオチがまたいいですねー。きっとこうやってこれまでも発見され、打ち捨てられたものはいっぱいあったのだろうなと思わせてくれちゃう。
さぁ、やっぱり面白すぎだ星を継ぐもの。こんなにもポジティブな人類賛歌、科学の賛歌だったとは。改めて読んでみて本当に良かったと思います。
人類の明日にとってもポジティブになれる作品でした。
よっしゃ、このままシリーズを読み進めて行っちゃいましょう。
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