グリメガの小説感想置き場

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【感想】五代ゆう『グイン・サーガ150 ミロクの手』

 

 栗本薫からバトンを受け継ぐ「続編プロジェクト」も20巻目の節目となる150巻。内容的にも節目を感じさせる展開となりました。

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あらすじ

パロへたどり着いた一行は、魔道師として軍を先導するはずのヴァレリウスがキタイの魔道師にさらわれてアルド・ナリスと対面するという大波乱を経るが、再びヴァレリウスの守護を得てクリスタルの内奥に侵入し、パロを滅ぼした怪物どもを生み出す恐るべきキタイの魔道と対峙するのだった。

 

 

 

 

【以下ネタバレ注意!】

 

 

 

 

 

 

 

ユリウスならまぁ

「えー、それまじぃー?」

 登場してそうそう現代しゃべりで言ってのけるユリウスw

 まぁユリウスならこれくらい言ってもいいか~と思わせてくれるのが凄いキャラです。

 またユリウスが出てくると作者五代ゆうさんの筆がノリノリになってるのがわかる。

 とにかくしゃべりまくるのが面白い。

 

言語化による決意

 アウルス・アランに話す過程でついにヴァレリウス、あの「ナリス」についてはっきりと言語化する。

 これ、ヴァレリウスは大事なきっかけをもらえたんじゃないですかね。

 ヴァレリウスのことですから、もしこのきっかけがなかったら、いつまでも「ナリス」の件は自分一人の胸に秘め、そしていつまでもどう受け止めていいかを100%割り切ることができない迷いの中にいた可能性もあったんじゃないかなと思ってしまいます。

 ここではっきりと「あれは違う」「偽物だ」と口にできたことで、自分の心をハッキリ決め、迷わないで立ち向かうことができたんじゃないかなと想像します。

 この後の展開を考えると、かなり重要な場面だったんじゃないかな~と。

 

シルヴィアの願い

 シルヴィアの前にあらわれたナリス。

 ナリスが若干シルヴィアに手を焼いている感あって面白かった。

 シルヴィアの願いは普通の暮らし。

 その話を聞いたナリスが本当にナリス本人の記憶を持っているとしたら、その胸に去来したのはアル・ディーンのことだったりしたのかな~とか想像してしまいました。

 

グラチウス襲来!

 ですよねー。来ますよねー。

 現状、クリスタルを支配する魔の手に対して、ヴァレリウスだけではどうにもならないわけで、逆転の鍵を握っているのはこの闇の司祭しかいないだろうとは思っていました。

 しかし来たら来たで厄介なことこの上ない(笑)。

 ほんと中原の平和はどうしたもんだか。

 

 邪悪な魔道勢力に対して通常の人や軍事力では到底太刀打ちできず、昔はクリスタルにいっぱいいたはずの魔道士・魔導師も動乱でほぼ一掃されて、まともに対抗できるコマがほとんどいないんですよね。

 アッシャという期待の星もみつかりましたが、まだまだヒヨッコですし。

 

 頼りになるのはやはりグインただひとり。

 グイン・サーガはこういうところがやっぱりヒロイック・ファンタジーの構造をしているんだよなーと思わされます。

 群像劇として多くの人の行動選択、運命の影響力も世界を動かすけども、最終的な最重要の運命はグインと言うヒーローが握る構造をしているわけですね。

 

イシュト暗転

 モンゴール討伐が終わってイシュタールに戻って来たイシュトはまたも鬱々モード。

 まぁ悪いのはイシュト自身なんですけどね!(キッパリ)

 

 アリサ、これは弱ったイシュトには洗脳のように効きそうな気配。

 現在イシュトが依存しかけている「あのナリス」は、このまま依存していったらその先は破滅しか想像できないんですが、そのかわりにイシュトがアリサに依存したとしてもこれはこれでなんかヤバそう感を感じてしまう。

 イシュトに必要なのは何にも依存しない自立なんだと思うんですが、現状の彼を見るにつけそれは一生敵わないんだろうなーとしか思えないな~。

 イシュト、どこへ行ってしまうのか。

 

ヤバすぎる財政状況

 イシュタールの赤字財政、ぜんぜん好転してなかった。

 トーラスを滅ぼしたんだから略奪とかして多少潤ったかと思ったらそうでもなかったか。

 イシュタールとゴーラの行政・税回収システムそのものがまったく機能していないんでしょうねえ。

 行政改革は一朝一夕に行かないですし、人材のない現状どうしようもないとして、とりあえずその場しのぎのカンフル剤として、いっそモンゴールから搾り取ったらどうなんでしょう。もちろん褒められた手段ではないんですが。

 モンゴールの貴族や商人、豪農を反逆の名目で締め上げ、財産や土地を没収し、国庫を潤し、とりあげた土地を別の者に与えて働かせる、なんて方法が、まぁ蛮族のやりかたではありますが、目先の対策にはなりそうです。

 

 でもそういう現実的な方策すら今のイシュト、およびその周辺にはとれないのでしょうねー。

 ほんと今のゴーラには人材が払底している。

 カメロンはひとりで抱えこんでいましたが、人材集めはやっていなかったんでしょうかね?

 野に伏している人材はきっといるとおもうんですよね。

 ゼロってことはないでしょう。

 広大なゴーラを統治していた機構の担い手は、いっぱいいたはずなんです。

 でも現在のイシュタール体制を警戒して、顔を出してくれないそういう状況なんじゃあないでしょうかね?

 

 ここであのナリスとかが実務能力のある人材を派遣してきたりしたら、イシュタールは助かりますが簡単に乗っ取られますね(笑)。

 改革は一気に進むけど、なにもかもをいいように牛耳られてしまいそうです。

 まぁでもイシュタール市民、ゴーラの一般国民の事を考えると支配者がどうあれとにかくなんとか財政を健全化してくれよと、そう思ってしまいますわな。

 イシュト、なんとかしておくれ。

 

アリサ自害!

 イシュトにミロク信仰を捨てろと強要され、自害しようとしたアリサ。

 驚きの展開でしたが、それによってイシュトがアリサへの気持ちに気付くとか、そういう定番の展開になるわけではなくて、イシュトはまたまた罪悪感から逃げようとするというのがいたたまれない。ほんとイシュトは救えないなぁ。

 

 またこの自害のなかでミロクの声を聞いたというアリサも凄い奴だ。

 このミロクの声と言うのもだいぶ怪しいなぁと思ってしまうのですが、それはそれとして、このアリサという娘はどうやっても心を折ることができないんだなと。

 ある意味で最強無敵の娘だなと改めて感じさせられた場面でした。

 

3つの宝玉

 瑠璃や琥珀などの3つの宝玉の役割とは。

 いずれグインの手に集まってなんらかの役割を果たすことになるようですが、いったいどんな役割が設定されているんでしょう。

 元はもっと機械的な存在だったのが、この世界に来て変質してしまったようで、こういうやや精霊的な性質や人格を手に入れているのもこの星に来てからってことなんですかね。

 

 グインのもとにまだ集まる時ではないというのはグインの記憶状態と関係していることなのか。

 それともグインが許され帰還の時が来たら……ということなのか。

 なんにしてもまだまだ先の話のよう。

 なんとも気の遠くなるようなお話です(笑)。

 

殺人カンフー集団!?

 新しいミロク教団は滅びてなかった!

 スカールが目撃したのは、あたかも香港映画のようなアクションでばったばったと草原の荒くれどもを倒す殺人カンフー集団。

 これだけの殺人技を繰り出すとなるとキタイの暗殺教団か?と思ってしまったのですが、そうではない様子。

 あくまで新しいミロク教徒たちが殺人技を極めちゃったということなのか。

 どうせキタイの竜王の手駒でしょうけども、こいつらを使ってなにをしでかそうというのか気になります。

 動き的には目的地はパロ、クリスタルで、ナリスの手勢になる感じですかね?

 あるいはイシュタールを新しいミロク教の「魔都」にしようとか、そういう陰謀が始まっちゃうんでしょうか。

 

老獪なりボルゴ・ヴァレン

 アグラーヤ王ボルゴ・ヴァレン、やはり食えない人ですねー。

 交渉のために奴隷女3人を連れて来る抜け目なさ。狡猾さ。

 恩着せがましくするのではなく、交渉材料にすらせず、ただ厚意だとするところも巧妙です。

 目指すクリスタルの古代機械はとうてい手には入らないでしょうけども、この男が今後大きな震源地になりそうなのは確かでしょう。

 あのナリスと手を組んだりしたら厄介そうです。

 

シルヴィアの夢

 ヴァレリウスたちが連れ込まれたのはシルヴィアの夢。

 平凡な幸せを手に入れたいというありがちな夢ではあるけれど、人に顔が無かったり看板の文字があやふやだったりと、悲しいほどに具体性がなく、確たるイメージのないぼやっとした憧れに過ぎないというのが哀れ。

 そして大事な赤ちゃんすら顔もなく、名前もなく、本質的にはたぶん赤ちゃん自体には関心がないというのも悲しい。

 赤ちゃんを愛しているのではなくて、赤ちゃんを愛する自分になりたいというそういうエゴのほうが強いのだろうなと。

 シルヴィアは徹底的に他者を愛したり関心を持ったりする機能が欠けているのでしょう。

 そういった意味ではシルヴィアってイシュトヴァーンと似通ったところがあるなぁと。

 子供のまま大きくなってしまった大人なのだなと思わされます。

 大切な誰かのために生きるとか、誰かを思って必死に頑張るとか、そういうことができない人たちです。

 

 また「そうならなければ生きてこれんかったということもできるがな」というグラチウスの言葉にもハッとさせられるものがありました。

 それだけ王族の王宮の暮らしというのは、孤独で厳しいものなのだな~と。

 たしかに、あの冷たいマライア皇后の子でもあったのだしなぁ~。

 

役者が揃った!

 「ナリス」も登場し、とうとう役者が揃った!

 今回はしかし顔合わせだけのひと手合わせといった感じのバトル。

 しかし謎の蝶を大量発生させて自在に操りユリウスを簡単に倒しちゃったり、「ナリス」もなかなかの使い手になってるようで楽しかった。

 とはいえいきなりグラチウスレベルにまではいかないでしょうけども、グラチウスも片腕を人質にとられているぶん今は遅れを取っている様子。

 つぎはその腕を取り返すクエストが発生するのかな?

 なんにせよこの「ナリス」とシルヴィアをめぐる戦いはこれからが本番といった感じで期待が膨らみます。

 

さて次巻は

 ヤガの大陰謀は潰え、モンゴールは滅亡、ゴーラはいったん着地、ケイロニアは一段落、パロはまだまだ大混迷。

 節目の150巻はゆるやかに全体が次なるターンに入ってゆく、そんな雰囲気のある巻でした。

 次巻151巻はどこから描かれるでしょうかね?

 そしてその発売はいつになるのかも気になるところです。

 あ、サリア遊郭の聖女みたいな外伝がまた来ても楽しいなー。

 続編プロジェクトがこれからもずっとずっと続いてくれることを期待しています。