
『無職転生』その後を描く外伝その1。
存在を知らずあやうくスルーするところでした。
前巻の感想
あらすじ
ビヘイリル王国での決戦の末、勝利したルーデウス・グレイラット。
彼を取り巻く人々のその後を描く物語集『蛇足編』が開幕!
シリーズ第1巻ではノルンの結婚話『ウェディング・オブ・ノルン』、
ルーシーの初登校を描く『ルーシーとパパ』、ドーガとイゾルテの婚活話『アスラ七騎士物語』に加え、ギレーヌの里帰りを描く書き下ろし短編
『かつて狂犬と呼ばれた女』の四編を収録。
人生やり直し型転生ファンタジー、激闘のその後の物語がここに!!
【以下ネタバレ注意!】
ノルン結婚編
本編では描かれなかったその後をいろいろ描いてゆく蛇足編。蛇足と言いつつも大切なキャラクターたちの気になるその後が読めてとても心地の良い連作でありました。
まずはノルンとルイジェルドの結婚編。
ノルン、てっきりあのあとルイジェルドに猛アタックするのかと思っていたのですが、そうか、ずっと思いつめつつも諦めちゃってたんですね。
ノルンらしいです。
一方、ルイジェルドさんがノルンのことをどう思っているのか、本編ではちょっとわからなかったのですが、ちゃんと好きになっててくれてて本当に良かった。
ルイジェルドさんの場合守る対象と思い込んだらずっとそのままっていう可能性もあったと思うのですが、献身的に尽くされている中で女性として見ることができるようになってたんですね。
ノルンの一生懸命さあればこそでしょう。
ルーデウス、相変わらず奇妙な言動というか奇行と言うか、シュールな場面の連続でこれはこれで安心します(笑)。
ノルンやルイジェルドにどう言ったものか、どう聞いたものか迷いに迷い、結果かなりシュールなことになってゆくのが可笑しくてたまらない。
どれだけ強くなり偉業を成し遂げたとてルーデウスはルーデウス。
これでこそルーデウスですわ。
そしてルイジェルドの意思を確認し、ひとつひとつ約束してもらいながら涙を流すルーデウスに、気づけばこちらもなぜかもらい泣き。
この二人の絆を確かめ合うような温かい名場面でした。
ノルンとルイジェルドの結婚エピソードだけど、ルーデウスとルイジェルド、ノルンとアイシャはじめ、人々の関係性がしっとりと、とても丁寧に描かれている素敵な一篇でした。
ルーシー入学編
すっかり親バカ状態のルーデウスに笑ってしまう。
まぁでも親と言うのは子を心配するものだし、自分が苦労したぶん余計にこうもなるか。
人の子の親になっても奇行が収まらないどころか悪化すらしそうなルーデウスが微笑ましい。
仮面と衣装を貸して自分に化けろと支持をだすオルステッドもオルステッドなのではないだろうか(笑)。
せっかく持ってるんだから千里眼を使えばいいのにと思っちゃうんですが、ああでも千里眼じゃ声までは拾えないか。
ルーシーの疑問にしっかりと答えてくれた先生も誠実に生徒に向き合ってくれるなかなかいい先生そう。
ルーシーのこれからも楽しみになれます。
振り返るとそこにシルフィがいる(笑)。
ソッコーで叱られるルーデウスに笑ってしまいましたが、雨降って地固まる。
親子三人仲良く変える風景がなんとも心温まります。
この親子の未来に幸あれ。
ルーシー視点だと、パパにあまり期待されてないかもと感じているというのはちょっとハッとさせられる言葉でした。
ルーデウスはめっちゃ期待しているはずなんですが、それはルーシーに魔法や勉学でトップになってほしいとか、親のように強くなってほしいとか、大それたことをしてほしいとかそういうことではなくて、ただただルーシーとしての幸せを手に入れてほしいと願う、そういう紛れもない親心。
でもルーシーとしては期待してほしいと感じてしまうものなんだなぁ~。
親と子と言うのも難しいものですね。
でもこのルーシーならきっと大丈夫と思えてきます。
きっととっても優秀に、健やかに元気に賢く育ってくれそうと信じられる、そういう一篇でした。
きっとノルンのように皆から愛され、生徒会になったりたくさんの友人に囲まれる存在になってゆくことを予感させてくれます。
明るい未来を感じさせてくれる心地よいエピソードでした。
イゾルテ婚活編
正直、本編ではまり記憶に残っていなかった水神流イゾルテさんの婚活エピソード。
なるほどエリスのライバルのひとりでしたっけ。
婚活に行き詰まった結果、アリエル女王から紹介を受けるがその男たちの変態っぷり。さすがアスラ王国の貴族連中だけある変態揃いで笑ってしまいました。
この王国も何とかしたほうがいいんじゃなかろうかと思ってしまうのですが、まぁ女王が女王だから当分無理でしょうね(笑)。
ここで描かれたちょっと意外なドーガの昔話。
ちょっと素朴な童話的な語り口が印象的でしたが、ドーガもドーガでなかなかの傑物だったのですねー。
そして挿絵で初めて見た気がするドーガの素顔。
あら、意外とイケメンじゃない。
もっとトロールとかオーガみたいな豪快な顔を想像してました。
ごついことはごつい顔ですが、だいぶ可愛い系が入ってて、素材はけっこうイケメン系だと思いますよ。
これはこれでイゾルテさん、めっちゃ掘り出し物ですよ(笑)。
その後の二人、なかなかお幸せそうでなにより。
ギレーヌ帰郷編
そういえばギレーヌ、まだ獣族の村に帰ってなかったんだった!
ということでこちらも本編で提示されていた課題がようやく解決されたギレーヌ帰郷編。
本編、意外と提示したけど回収してないお話ってあったんですね。
ギレーヌの子供時代の『獣返り』、いったいなんなんでしょうね。
獣と人の間のような獣人族ですが、獣はそもそもわけもなく攻撃的になることはないと思うんですよね。
獣の獣性とは別に、なにかの原因がありそうな症状です。
そのへんにも裏設定があったりしそうです。
ガル・ファリオンの乱暴だけども適切な措置なくして今のギレーヌは絶対なかったなと思えるわけで、ガル・ファリオン、ほんとにありがたい存在でしたね。
合掌。
ルーデウスの言う通り、人は変わることができる。
それを最も強く体現している一人がギレーヌでもあったんですねー。
そしてそんなギレーヌを受け入れることができた若き族長ギュエスも立派。
言ってしまえば子供時代にボッコボコにしてきた悪夢のような存在とちゃんと和解できるのかっていう話でありますからねー。
ほとんどトラウマだったと思いますよ。
そういう相手でもちゃんと受け入れ受け止めることができる。
ギュエスさんも立派ですわ。
読み終わって
世代は移り変わり、親から子へ、子から孫へと時代のバトンは繋がってゆく。
世代を超えて、人の暖かい思いは紡がれて、そして未来へと伝えられてゆく。
人は死んでも、親が子を、人が人の幸せを祈るあたたかな気持ちはきっと不滅。
そんなしっとりとした、あたたかな気持ちにさせてくれる気持ちのよい読後感の一冊でした。