グリメガの小説感想置き場

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【感想】オルクセン王国史 ~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~ 1

オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~(サーガフォレスト)1

 いま何かと話題のオルクセン、以前Kindleで激安セールをしてたのでまとめて購入。先に漫画版を読んでみたらめちゃくちゃ面白かったので今度は原作小説版に突入です。

 にしてもタイトル長いなぁ~(笑)。

 

 

概要

「銃と魔法」の時代。
オーク族を筆頭に多数の魔種族を擁する連合国家オルクセンと、美しいエルフたちの国エルフィンド。
歴史的対立を深める両国家の国境で、オークの王グスタフと、故国を追われたダークエルフ氏族長ディネルースは、運命の邂逅を遂げた……。
平和なエルフの国を、野蛮なオークが焼き尽くす――そんな「異世界ファンタジーあるある」の常識を覆した異世界戦記がここに誕生!

 

 

 

 

 

 

【以下ネタバレ注意!】

 

 

 

 

 

 

 

文体

 格式を感じさせるやや古風な文体なんだけど、非常に読みやすくてスルスル入って来る魔法がかかってる。

 雰囲気がとてもよくて昭和の戦記物……というか『坂の上の雲』を思い出します。

 

 

 まともに読んだ近代戦記モノってわたくし、坂の上の雲くらいしかないんですが、あの作品がめちゃめちゃ好きなんですよねー。なのでオルクセンをはじめて漫画で読んだときは「おお!これは!オーク版坂の上の雲だ!」って思っちゃったんですよね。漫画版作中でもグスタフ王の前世が坂の上の雲を読んでて、やはりね!って嬉しくなっちゃいました(とはいえ実際は数多の軍記もの、実際の戦争を参考にしているのでしょうが)。

 あとふと思ったんですが、坂の上の雲と言えばドラマでは渡辺謙さんがナレーターをしてましたが、オルクセンがアニメ化したら(まずもって遠からずするでしょうこれは)誰がナレーターやるんでしょうねー。今のところ完全にケン・ワタナベの声で脳内再生されてます(笑)。

 

うまそう!!

 なんてこった、食べ物がえらい美味しそうですよ!

 漫画版では食事がとにかく美味そうに描かれてたのが印象的でしたが、あれは漫画独自の武器ではなくて、原作からしてこうだったとはなー。

 読んでてヨダレが出てきてしまいました。これは寝る前、深夜に読んだらいかん小説ではないでしょうかね(笑)。

 焼きたてのブルストにぜひかぶりついてみたいものです。

 

詳細な説明

 漫画版もとても素晴らしいのですが、原作小説を読んで初めてわかる裏事情や詳細が冒頭からけっこうあるんですね~。

 漫画はその性質上、情報を厳選しつつちゃんとオルクセンの物語を成立させているということがわかってあらためて漫画版のすごさも知れました。

 

豚食するオーク

「オークに豚カツ出すたぁいい度胸だな!」

 これはわたしが昔やったTRPGでオークが吠えたセリフ。そうして始まった酒場の乱闘騒ぎを思い出しました。

 この世界のオークは豚を食うんだなぁ~と興味深く思っていたら、なんと同族共食いを禁忌として、その共食い欲を抑止するためにあえて豚食が推奨されてたとは。こまごまとした設定が良く考え抜かれているこの作品ですが、こういう細部が想像をかきたててくれてよいのですよね~。

 

兵站のために

 参謀本部という組織がやれ戦略だ戦術だ編成だ陣形だ言うようなもののためにあるんじゃなくて、ひたすらに巨大な兵站を四苦八苦してやりくるするためにこそ巨大組織として成立したのだというのが実に面白い。なるほどそりゃそうだよなと思わされます。

 軍隊は兵站なしには成立しない。兵站を成立させるためにこそ国家レベルの軍略があるんだろうし、兵站が成立して初めて戦術の絵図面が描けるわけだ。もしくは兵站が破綻してしまったときにこそ戦術と言う小手先でどうにかこうにかひっくりかえそうとするのが物語になったりするわけだろうなーなんて。

 戦争というものはなんといっても兵站ありきなんだなと納得させられます。

 

生き様の面白さ

 グスタフ王という人、オルクセンという国の特殊さ、面白さ、その成り立ち。

 こうやって読んでいくと、ともすると社会の教科書のようになってしまいそうな話なんだよなーって思うんですがが、それがやたらと面白いからすごい。

 説明文のひとつひとつが、おお、そんなことがあったのかといちいち面白くてしょうがない。凡百の小説なら、たぶん眠くなってしまうような地の文です。

 これはやはり、説明されてる内容が面白いのはもちろんですが、そこに生きる人たちの視点、グスタフ王やディネルースたちの感情の揺れ動き。驚きや、怒りや、涙がまずそこにちゃんとあるからだろうなと思うのです。

 その生き生きとした生き様を介して読むからこそ、この世界と時代と国家の特異さを説明する説明文が楽しいのだなと感じます。

 魅力的な彼らの行動選択を、人生を、大きく動かす説明だからこそ、興味深くぐいぐい読めてしまうと言うのはあると思うんですよね~。

 どんなに面白い説明文でもそこに人が生きていなければ読者の興味は引かないんではないかなと。

 

それぞれの長所

 大鷲は翼を持ち、ずば抜けた視力がある。

 コボルトは魔力に優れ、遠くの気配を察することができる(嗅覚かな?)。

 それぞれの種の長所は自分ではそれが特別なものだとはわからない。他の種とまじわって初めてそれが他に抜きんでたものだとわかるのだと。

 なんだかいろんなものに通じそうな話です。

 たくさんの種が入り乱れるオルクセンは今的な多様性の話でもあるんだなぁ。

 

配給の工夫

 オーク軍の1日の配給、『マーマレード又は蜂蜜四〇〇グラム』ってのはすごいな!

 でかい瓶ひと瓶くらいのマーマレードや蜂蜜を1日でぺろりか!

 肉やパンはどんなに大量に食ってても「オークだしな」ってスルッと思えるんだけど、この一文であらためてオークの胃袋のすごさを思い知った感ありました(笑)。

 甘いものを大量に摂取できるのって、なんだかすごいなーと。

 まぁ行軍中とか重労働時はカロリー摂取に甘いモノが高効率ってのもあるのかな。

 

 肉は目の前で切り分けスープも目の前でよそわせる。 細かすぎるほどに細かい決まりが兵の士気を上げることに貢献するのか。

 面白い気づきだなー。言われなければ気づかなかったわ。

 食に関してもこまごまなことまで様々な創意工夫がこらされて、経験の蓄積が生かされ、そういった積み重ねが軍を精強なものにしているというのが非常に面白いです。

 

オーク兵の強さ

 やっぱりオーク兵は強いな!

 銃撃戦の時代、大きな体格はマトが大きくなるだけでネックになるかと思いきや、その活動能力、機動力、運搬力は部類の兵士を生み出しているのだと言う説得力。実に理想の兵士だなーと思わされます。

 休む必要もなくあっというまに塹壕を作っちゃうっていうの、すごく説得力のある描写でした。

 まぁ、デカすぎて騎兵を作りにくいという欠点はそれなりに大きいか。

 あと時代が進んで戦車乗りや戦闘機乗りが必要になった時に人間サイズのコクピットに収まりきらなくて大変そうというのは想像がつきますね。かといってコクピットを単純に大型化すればいいというものでもないだろうし。

 来たるべき現代兵器戦の時代にはオークたちには一つの試練が訪れそうです。

 

個の発想が世を動かす

 物事が激しく発展する時代は個々人のちょっとした思いつきが大きく世の中を変える時があるというロマン。

 ダークエルフの輜重隊調査場面でのちょっとした発言が、その後市井の物流の大変革となるというの、ワクワクするんですよねーこういうの。

 坂の上の雲でもありましたっけ。「これは、個々の才能が個として時代を動かし得た、最後の時代であるうんぬん」といいったかんじのメッセージがすごくロマンを感じさせてくれましたものでした。

 オルクセンと言う世界もそうなのかもしれないなー。

 

タウベルト

 救出されたコボルトのタウベルトくんも、後日戦争のなかであっけなく戦死してるというのが悲しいんですよねー。戦争は物語のように辻褄を合わせない。戦争と言う巨大な嵐の無慈悲さ、理不尽さにズーンとさせられます。

 

エルフもすごい!

 オルクセンはすごい!だけでは済まさず、魔術通信、探知技術においてはエルフはかなり先を行っていたのだというのがいい。

 それが判明し、さらにオーク軍が進歩するのにディネルースが貢献できたというところに満足感も感じます。

 またディネルースが気を使って遠回しに伝えようとしたところを素早く察するグスタフ王の英明さも光ります。

 そしてまたまわりの将軍らの受け止め方の快活なところの気持ちよさもあるなー。

 総じて、このオーク軍はすごく強いな、という期待感が高まって来る印象的なシーンでした。

 

SFも?

 星が落ちた伝説。

 今でも西の大海に星の中心が埋まってて、それが方位磁針の指し示す方角になってると。オークの祖は星の欠片に触れて言葉を解するようになったとか、オルクセンにはSF要素もあったのかと。

 もちろんオルクセンはあくまでファンタジー軍記ものでしょうから、SFがメインに出てくることはないんだろうなとは思うんですが、ファンタジーでこういうSF話がチラリと仄見えるのってわくわくするんですよね~。

 

王とディネルース

 グスタフ王とディネルース。王が転生者であることを見抜くエピソードを比較的あっさりとクリアし、それをきっかけとして結ばれるふたり。効率のいい展開と言ったらおかしいかもだけどとても上手いなと。

 戦に臨むかのように冗談を言いながら事に臨むふたりに可笑しみも感じつつ、どこか照れ隠しをしてるような人間臭さも感じてとても微笑ましい。同時にどこか哀愁も感じてしまいます。

 ふたりを祝福し、その幸せを祈りつつ、でも戦争だからねと。普通に死別、もしくはどちらも……ということもあるだろうなと。

 これは早めに覚悟はしておくべきか。

 

 

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