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【感想】オルクセン王国史 ~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~ 3

オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~3 (【小説】オルクセン王国史)

ついに開戦!!

“野蛮なオークの国”“平和なエルフの国”を蹂躙する!!”

 

 

前巻の感想

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あらすじ

魔種族統一国家オルクセンの王グスタフは、オークらしからぬ穏やかで理知的な名君と名高い。それは彼が特殊な事情を抱えてこの世界に生まれてきたためであった。 グスタフ王は故郷を追われ臣民となったダークエルフの美女ディネルースと心を通わせ、ついにエルフたちの国エルフィンドに宣戦布告する。奇襲ともいえる神速の開戦により、戦いはオルクセン軍の圧倒的有利で進むかに思われたが……。 重厚にして胸アツ! 空前絶後の異世界軍事ファンタジー、待望の第3弾!

 

 

 

 

 

 

【以下ネタバレ注意!】

 

 

 

 

 

 

 

電光弾、地獄絵図

 激烈な海戦。

 火の海と化した敵艦で焼け死んでゆく無数のエルフたちの様子が無惨であることはもちろんなんだけど、その阿鼻叫喚を魔法の通信で脳に叩きつけられてしまったコボルトたちが頭をやられてしまったというのも地獄絵図だなと。

 こういう被害は思ってもみなかった。

 

 しかし外見が可憐な姿をしたエルフたちを皆殺しにするというのは、やはりどうしても残酷に見えてしまうものだなぁ。

 もちろん狼だろうとドワーフだろうとオークだろうと、無惨な殺され方をしたら残酷なことに変わりはなく、そこに1個の人がいて命を奪われるということに違いはカケラもないというのは理屈ではわかっていても、どうしてもそう感じてしまうのだなぁと。

 

戦場で生まれる新戦術

 戦場のアドリブで、大鷲視点からの空中観測間接射撃が誕生する。こういうのワクワクするんですよね~。

 世界がまさに生きて動いて変わっていっている臨場感。

 

 また、あれほどに用意周到に準備を重ねてきたオルクセンでもなにもかもが完璧というわけじゃないし、神の視点のわれわれからしたら「そのくらいのこと、なんで事前に気づかなかったの?」って思えそうなことでも、実際はそう簡単にはいかない。

 その場になってハッと気づいたことが大きな転換点を生む大発見になったりする。そういうところが逆にリアルに感じられます。

 

明暗、オルクセンとエルフィンド

 一つの街に3000発。

 凄まじい物量に感じるけども、砲一門当たりに換算すると15発か。

 急にリアルに感じられてくるから不思議。

 とはいえやっぱり3000発ですからね。兵站も現場での運用も軽々とこれをやってのけるオルクセン近代軍隊の凄まじさよ。

 

 対してエルフ側は完全に準備不足。怠慢のエルフィンド。

 ただ備えが足りないというだけではなくて、ダークエルフを掃討してしまった結果、ダークエルフたちが担っていた防衛システムがボロボロになっているというのが実に因果応報。皮肉が効きまくってます。ざまぁ見ろと言いたくなってくる。

 

空白の外務省

 宣戦布告を受けたエルフィンド、その通達が外務省で止まってたとは全くの意外!

 想像では、エルフ国内はパニックにはなりつつも宣戦布告の衝撃はエルフィンド国内を駆け巡って、それぞれの箇所で対応が始まってるものだとばかり思ってました。

 責任を幹部たちに擦り付けて処刑して、女王には報告せずにいたなんて、なんて見識のなさ。思考の鈍麻。

 すぐさまオルクセンが攻撃してくるとはカケラも思わなかったというのがにわかには信じがたいのだけど、それはオルクセン側視点で読んできたからそう思うだけですかね?

 でも根底にエルフの傲慢さがやはりありそうに感じてしまうなぁ。相手を侮り、自分たちが後れを取るとはハナから考えにないのではないかな?

 

進撃!進撃!

 順調すぎるほどに順調な進撃。アンファングリア旅団も初戦を勝利で飾る。ここまで順風満帆だとちょっとあとが怖くなってきます。

 

 途中にある街や村落をすべて落としてゆくのか~。

 しかも丁寧に食料を押さえ、ちゃんと代金を支払い、取りすぎないようにする。つまりは現地住民をすべて把握し計算しなければいけないわけだ。

 さらに電信通信手紙の類もぜんぶ押さえて調査までおこたらないとは。

 これは予想だにしなかった手間のかかる丁寧な話だなと。近代戦の斥候というのはこんなにもやることが多いものなんですね~。

 もちろんオルクセン軍がきわめて几帳面というのはあるだろうけども。

 

里帰り、陰惨

 そうか、ここはダークエルフたちのまさに故郷だったのか……。

 白エルフたちが我が物顔で住んでいる村々が、もとはダークエルフたちの村落だったのかと言葉を失ってしまう。

 皆の胸には万感の思いがあることだろう。

 しかもこのスコル村はディネルースの治めていた村って……。その涙に胸が熱くなる。

 

 森に埋まっていたダークエルフの遺体の山。とんでもねぇ大虐殺をしやがって。

 白エルフにとってダークエルフはなぜそこまでしなきゃいけないものだったのか。謎です。

 白エルフの傲慢さや異常性が原因だと単純化してしまえば楽だけど、そこにだいじなものを見落としはしないだろうか?

 

通商破壊戦

 なるほど、戦争ではこういう海賊行為のようなことも作戦行動のうちなんだと目からうろこでした。

 民間船舶に偽装して近づいて……っていう、そういう騙し討ちをすることは今ではさすがに禁止されてそうだけど、許されてた時代なんだなぁ。面白い。勉強になります。

 

軍の後に道はできる

 道を普請しながら進撃するのか。これもまた知ってみればあたりまえだけど、ちょっと意外な話でした。これはたいへんな作業だな~。

 でも道がなければ兵站もままならない。道など後回しにして「進撃だー!」って後先考えずにやってたら必ずどこかで兵站が枯渇しちゃうわけですね。絶対必要なプロセスなんだなぁ。

 でも道を作ってる間に敵が態勢を整えちゃいそうで、やっぱりジリジリとしちゃいますね。私ならついつい気ばかり焦って攻めてっちゃいそう。私に大将はつとまらないなぁw

 この間、エルフたちがもたもたしていてくれることを祈るばかり。

 

ファルマリア港攻略戦

 降伏勧告をすればそれを断った側に民間人被害の責任をおわすことができると。

 なんて狡猾な!

 参謀という職務におけるその本質とグレーベン参謀の覚悟が見て取れます。

 

潰走と追撃

 エルフ族狂乱の潰走。詳らかな描写がとてもいい。淡々と事実だけを並べるのが逆に悲惨さを伝えてきます。

 ダークエルフたちによる凄惨な追撃戦も、しかしあの森の虐殺の痕跡を思えばそりゃまぁそうよなとなります。

 白エルフたちも降伏するのではなく味方と合流するために逃走したのだから全滅させられても文句は言えませんわ。

 

戦後の景気対策

 戦争を始める前にもかかわらず既に戦争が終わったあとの不景気対策も考えているっとは。徹底的に入念だ。そうだよな~、言われてみれば必要だ。

 戦後の経済対策の中枢はなんといってもエルフィンド開発か。無垢の地エルフィンドに投資して開発すれば経済は一気に伸びると。たしかにそうかも。

 破壊である戦争が、財務大臣の目から見れば巨大な開発と投資を待つ未開拓の原野にすら見えてくるという妙。視点の逆転が面白い。

 うまくいけばいいですね~。

 

すべてがうまくゆくわけもなく

 スマラクト、濃霧のなかで味方と衝突して沈没。多数の死者を出してしまう。

 また沿岸監視哨では艦影誤認が相次ぎ大混乱。

 ですよねー。なにもかもうまくいくわけもない。

 むしろここまでがうまくゆきすぎたのかもしれません。

 オルクセンサイドにも試練の時は来るはずですよ。

 

カランシア戦隊

 エルフィンド側ではリョースタ艦長ミリエル・カランシアひきいるカランシア戦隊が発足。

 絶望的な状況のなか少数精鋭の味方を率いてゆくという、これぞ主役って感じではないですか。思わず応援したくなります。

 のちのオルクセン世界ではこのカランシア戦隊を主役に描いた物語も多数つくられたんじゃないですかね。

 カランシア戦隊に沿岸部を襲われ、にわかにぐらつき不安におののくオルクセン国民たち。そうそう、物語はそうこなくっちゃ。

 

屑鉄戦隊VSリョースタ!

 怪物のように巨大な敵艦隊相手に「食べ応えがあります」とは豪快な!

 また、僚艦ファザーンが機関に問題があり、あえて派手に着飾って囮を買ったのを見て

羨ましくて仕方なかった。

 というのもどうしょうもなく胸を打つ。それが海兵の心なんだな。

 

 そして始まる熾烈な海戦。

彼らはまだ知らない。

——この航海において、彼らは英雄になることを。

 っていうからてっきり屑鉄戦隊が奇跡的に大勝利をおさめるのかと思いきや、そっちの「英雄」か!!

 むしろ「英霊」のほうじゃないか!!

 

 ひたすらに淡々と、正確を期すように、詳細に描かれてゆく屑鉄戦隊の損害、死傷の描写に呑まれるようです。

 チープな擬音を挟んだりせず、ことさらに煽情的に描きたてたりもせず、記録映像のように記してゆく筆致が逆に真に迫る圧倒的な迫力となって手に汗握ります。

 最後の最後、コボルト兵を海に逃がして散るグリンデマン艦長。かっこよすぎてさすがに涙が溢れますよ。

 

 屑鉄戦隊よ永遠なれ。

 愛着をわかせ哀悼の気持ちにさせるのがほんと上手いなチクショウメ!

 

海戦決着!

 屑鉄戦隊の仇をと、オルクセン海軍本隊が到着し、舵をやられ動けなくなっていたカランシア戦隊は沈められる。

 敵艦リョースタの艦長もまたよかった。

「こんなに周りは燃えているのに……火は無いか……」

 これもまた味わいある名言だなぁ。うまくいかないときは何事もうまくいかないものですね。

 合掌。

 これだけの怪物的巨艦、無敵かと思われた超巨大艦が、一発の魚雷で舵をやられて、それだけですべてが崩れて終わってゆくのだなぁ。

 壮絶、まさに壮絶。

 リョースタも、ヴァナディースも、なんとも無残に燃えて沈む。

 一切容赦ない破壊と血の海。地獄絵図。互いに破壊の限りを尽くした戦いのあとに流れる寂寥感よ。

 

巻末外伝

 巻末外伝がまたたまらない。

 良き海兵のオスたちの生き生きとした姿。そんなみんなが散っていったのだなぁと思うともうたまらない。

 ただただ合掌。

 

 

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