オルクセン軍とエルフィンド軍のあまりにも壮絶な大激突!
ネニング平原の戦いがたっぷりと描かれるオルクセン5巻感想です。
前巻の感想
あらすじ
オークを魔種族を擁する連合国家オルクセンと、エルフたちの国エルフィンドの因縁の戦いは、いよいよ激化していた。ネニング平原での会戦は苛烈を極めて……もはや戦を決するのは、鉄と血の量だけだ。《平和なエルフの国を、野蛮なオークが焼き尽くす》という「異世界ファンタジーあるある」の常識を覆した異世界戦記第5弾!
【以下ネタバレ注意!】
- あらすじ
- アレッセア島攻略作戦
- 痛恨
- インタビュー記事
- エルフィンド最後の軍艦
- 豪快シュヴェーリン
- ゲリラ戦法
- 浸透作戦
- 伏線
- 魔術刻印の罠
- 師団対抗演習の第1師団
- 大損害
- メルツァー少将の英断!
- 塹壕足
- 浄化の原因
- 血の通う物語
- 黄金樹旅団、突入!
- オーク騎兵
- 逆襲の大作戦!
- 奇跡
- 進撃開始!
- 睡眠不足の地獄
- 墜落
- 禍根
- ドワーフ隊長の外伝
- まとめ
アレッセア島攻略作戦
今度はどんな熾烈な戦いになるかと思ったら、なんとこれはあっけなく終了。肩透かしとは良いフェイントをしてくれる。
でも降伏することを選択した島のエルフの指導者たち、賢明な人たちでよかった。
ここで玉砕戦法とか取られなくてよかったよ。
痛恨
ツィーテン将軍、なんと落馬による事故死。
将軍もまさか自分が落馬で死ぬとは思いもしなかったろうに。
グスタフ王は自分が無理に老体にムチ打たせたせいだと責めてるようだけど、ツィーテンさんこそ自分のせいでと、無念で無念で、己が不甲斐なくてしかたなかったに違いないですよ。
悲しいなぁ~。
インタビュー記事
インターバルのミニエピソード集的に様々な人のインタビュー記事が羅列される。
戦場の兵士たちだけじゃなく、調理担当だったり、看護婦だったり、後方でもたくさんの人たちが、たとえ直接戦うことはなくとも兵士たちと共に戦っていたのだという息吹が感じられる。
こういう末端や後方にもスポットを当て忘れないオルクセン好きだ。
看護婦にはおかしなことが起きないよう、器量の良くない者が選ばれたりするのか。細かなことまでいろいろと考えるものだなぁ。
今となってはちょっと笑い話にもなってしまいそうな話だけど、当事者たちにとってみれば真剣な悩みや大きな問題になりますものね。
送られてきたエルフの負傷者とのドラマ。最初はかたくなだったものが回復したときに泣いて感謝し、看護婦の方も泣いて、というの、これはしんみりしてしまうなぁ。
こういうことは現実でも多々あったに違いないと思わせてくれます。
エルフィンド最後の軍艦
無抵抗に、艦長だけ残して無人の船となって沈められたというのが意外だった。大勢が決してしまうとここまで一方的になるものか。
これもまた、海上補給を絶った海賊作戦のたまものでもありましょう。
ただ撃たれまくって沈む最後の艦。それでも軍旗だけは意地でも立ててというのがとても哀愁だなぁ。
豪快シュヴェーリン
「儂がいるのだから、もう占領したのと同じだ馬鹿者!」
は最高だなぁシュヴェリーン閣下。それもまた計算された豪快演技なのだからすごいひとだ。
ゲリラ戦法
エルフィンド、今度はオルクセンの兵站を狙ったゲリラ戦を仕掛けてきたか。いやらしく急所をねらってきたなー。これもマルリアン将軍の策なんだ。ほんとやっかいな敵将だ。本人はとっくに降伏しておいて、このあの手この手の罠カードがあちこちに伏せられてる感じ、とても厄介この上ない。
民衆も当然敵兵を支援するし、敵地の戦いはこれだからやりにくい。
エルフィンド人71万人を押し付けたことに始まり、焦土戦術やゲリラ戦戦と、徹底的に兵站を痛めつけてくるエルフィンド。
普通なら息切れしてこれもう無理!撤退!ってなってしまいそうなところ、これをよくぞこらえてますよオルクセンは。痛めつけられても何とかしてしまう兵站組織の底力よ。
浸透作戦
敵のいない方向を魔術で探知する新しい魔術探知使用法!
進化するのはオルクセンだけではない、エルフィンドも試行錯誤し進歩した。敗北のなかで学んだことを生かし、逆襲に転じようというのは実に燃えるものがあります。これは思わずエルフィンドのほうも応援したくなっちゃいますわ。
伏線
なるほど! あのリヴィル湖畔の戦いはこの実験だったのか!
用意周到!
まさにこの乾坤一擲のために全てをかけてきた感じです。
エルフィンドも一方的にダメダメ国家ってわけじゃない、ちゃんと頑張ってるってことが描かれるのがいいですね。
魔術刻印の罠
なんと、あの生鮮食料保存や荷物選別のための魔術刻印が、物資保管場所をエルフィンドに知らせる目印になってしまうとは! 何たる伏線!
エルフ側もなんとまあよくぞこの小さな情報に気づき、着想し、作戦計画を形にして、大胆に実行してしまったものだと感心します。彼女たちとしても藁にもすがる思いで、あの手この手を考えたのでしょう。
末端の一将兵が気づいたことを、全軍の大作戦に取り入れたというドラマはオルクセンもエルフィンドも同じようなことが起きているというのが興味深い。
小さな発見をもとに、今その手にあるすべてをかき集めて決死の大逆転につなげようとする。死力を尽くすとはこのことだし、そういった点においてはオルクセンもエルフィンドも変わらない。
なんだかますますエルフも応援したくなります。
また、歴史はトップの人間たちだけが決めるのではない、いろんなところで動いてゆくのだというドラマでもありますね~。
師団対抗演習の第1師団
おお、あの師団対抗演習をたたかってた第1師団か!
あのときに押し込まれた経験が今回のピンチで生きるってのは、これまた熱い伏線回収じゃないですか。
経験はやっぱり糧ですね。
軍としても演習を実施したことがちゃんと成果として回収される。素直にうれしいことです。
大損害
淡々と、ただただ事実と数字を並べるように描かれる損害状況。死傷者の数が物語るとてつもない被害。その凄惨さよ。なんとまぁひどいありさまだ。
いやー、あの用意周到で精強なオルクセン軍がこんなにも一方的にやりまくられるなんて。
これはどうやって立て直したものかなー。
ここからひっくり返す逆転の具体的戦術が思い浮かばない。
メルツァー少将の英断!
ギムレー高地の小高い丘こそこの戦場における急所であると見抜き、無茶をさせてでも兵と砲をそこに上げる。急斜面に陣地を作る。
水も食料も医療品も乏しい苦しい状況のなか、必死に踏ん張る兵士たちの奮闘ぶりに胸が熱くなります。
弾丸の補給が大変だ、というのもわかるけど、水も食料もほとんど手に入らない、という描写のほうが臨場感を持ってその苦しさが理解できるなぁ~。この苦しい状況の中、よくぞ兵士たち、頑張ってます。
塹壕足
うわあ、早くも塹壕足かよ!
キレイなエルフの足があの有名な塹壕足になってしまってるというのは辛いものがあるなぁ。
なるほど、エルフはオークほどのパワーはないから塹壕を作るのも得意じゃなさそうだしなぁ。排水設備とかもろくになさそう。
綺麗で清楚な妖精のようなエルフたちがそうやって泥と汚水にまみれて塹壕足になってっちゃうというのはなんとも痛ましい。
浄化の原因
ダークエルフ族への民族浄化という惨事は、まさか女王の善意に発端があったとは。
ダークエルフへの差別をなくそうと苦慮し、一人を重用した結果が暗殺を呼び、さらには民族皆殺しにまで至ってしまうという、なんたる悲しくむごたらしい皮肉。
あまりにも酷い話だし女王も可哀想に思えてくるけど、ただまぁ厳しい見方をしてしまえば、ろくに根回しもせずに重用したんだとしたらそうもなろうかとも思えてくる。
女王もちょっと迂闊だったんじゃないのか?と。
いじめられっ子を救おうとして教師がえこひいきしたら、そりゃあ余計にいじめられるよなってことです。
それにしてもエルフィンドの女王がこれほど力のない、名ばかりの女王だったとは意外でした。
エルフィンド宮廷は貴族たちが権力闘争と暗闘に明け暮れ、国内は複雑な差別で分断され殺戮の嵐となり、農耕は衰退し生産性もガタ落ちして経済的にも衰えて。なすべくしてなった滅亡かな。
血の通う物語
ディネルースと褥を共にした寝台車だから王はこんな状況でも落ち着いて眠ることができるのだという人間的な感性。とてもよい。
論理性ではない感覚的実感。非論理的な、しかしそれこそが生きている人間が感じる確かな感覚、実感ですよ。
実感をともなった人間描写は、世界そのものを作り物ではない、ちゃんとニオイをもった本物だと感じさせてくれます。作者の頭の中だけで考えられた記号と書割ではない、そこに肉体を持った人がいて生きて食べてうんこしていると感じさせてくれる。
こういう血の通った創作はたまらない。「そういう風に人って感じるんだなーと」、そういうタイプの生の学びを得ることができます。
これは味わい深い。
黄金樹旅団、突入!
オルクセン軍前線に増援が派遣されて、ああここから逆転開始だぜーとおもったら、なんと黄金樹旅団突入で更にエルフ軍が押せ押せに!
うあー、最大のピンチだ! 予想外!
さっすが決戦だけある大激戦。激闘、激闘、また激闘!ですわ。
オーク騎兵
オルクセンは騎兵が弱い。
そういえばD&Dなどの他の代表的ファンタジー世界ではオークは馬じゃなく巨大なイノシシとかに乗ることが多い気がしますね。
この世界には巨大狼はいるけど絶滅寸前みたいだし、巨大イノシシはそもそもいないっぽいなぁ。
まぁ、そういう騎兵が弱いオルクセンだからこそ、ディネルースたちの活躍が期待されちゃうっていう仕掛けなのでしょうね。
逆襲の大作戦!
南は南でなんとかするから北は当初の作戦通り突入せよと。攻撃は最大の防御だなー。やられる前にやれ!だ。
この牙をむき出しにしたような闘志あふれる選択にこちらもアツくなる。
奇跡
そして本陣を守る意外な増援! この膨大な兵はいったいどこから出てきたのか、その手品の種はなんと輜重兵って!!
う~ん、じつにオルクセン!
兵站を中心軸にすえてきたオルクセンが、兵站の担い手たちである輜重兵で勝つ!
実にオルクセンじゃあないですか。
熱烈なグスタフの人気がまず大きかったですねー。輜重兵たちの多くの志願者たちに加え、あの沖仲仕たちまで参戦してくれたとは。うーん、ムネアツ展開!
さらにはあの新造戦艦ラーテの主砲まで!
開戦が早すぎて結局ほぼ活躍できないかと思われていたラーテがなんと陸戦で逆転の一打を生む。これまたアツい!
さらには大鷲の航空機爆撃がトドメとばかりに投入される。
まさにこれまで積み上げてきたすべて力を結集した、こぞってかき集めたような全力総力の大逆転。激アツです!
しかも大博打の大逆転ですわ~。
いやー、見せてくれるじゃあないですか!
ともあれここで黄金樹旅団が引いてくれてよかったよかった。
訓練は一応受けているとはいえ、輜重兵や非戦闘員の港湾労働者たちだったりしますからね。
彼らが実際戦うことになってたら、被害はかなり大きかったはずですよ。
進撃開始!
移動弾幕射撃か~。面白いことを考えるなぁ。
味方の砲撃の傘の下、計算された距離、タイミングを正確にはかって歩兵をギリギリ前進させる。砲撃で敵を黙らせておいて歩兵を近づけ、一気に叩く。
強力無比な作戦だなーって思うけど、一歩間違ったら大事故だこりゃ。
あるいは砲撃範囲から歩兵の間が開きすぎたら効果減退しちゃうだろうしね。
徹底的に訓練統制されたオルクセン軍ならではの離れ業じゃないのかな。
列車の時刻表になぞらえるのはとてもわかりやすかった。
オルクセン第十五師団第一大隊による白昼の突撃。凄絶をきわめる突撃と血の海が目に浮かぶ。
睡眠不足の地獄
戦闘が長引き何日も眠れない。
死ぬほどつらいだろうなぁこれは。
どんなに眠りたくても眠れない。眠ればもう目が覚めることはないかもしれない恐怖もあるだろうし。そもそも戦場ではウトウトしても砲撃音とかですぐ目が覚めてしまうかもしれない。
極度の眠気と疲労に襲われながらも、集中力はどんどん減退しながらも目の前の敵を撃たなきゃいけない。撃たなきゃ死ぬ。ちょっとした小休止が奇跡的にあったとしても、じゃあ今のうちに寝ておけと言われてもそれでも気が高ぶって眠気など来ないかもしれない。
逆襲のチャンスが来てもこれでは限界だ。出るに出られない。すでに限界の兵士が大半だったろう。
墜落
墜落した大鷲兵とコボルト兵が降伏していながらも惨殺された事件。
もちろんオークだろうとエルフだろうと一個の命なのだけど、なぜだかとくに悲しくて仕方ない。コボルトが大鷲をかばおうとしていたというのがまた無性に涙を誘います。
降伏した兵士をめった撃ちにするエルフィンドとか皆殺しにしてやれ!って思わずカッとなってしまうなぁ。
しかし、コボルト兵が……ときて、今度こそタウベルトくんか?と思ったらまだ生きていた。もう、毎度毎度ひやりとさせてくれるw
禍根
生き残るためとはいえ、エルフィンドの村々の人たちも大変だなぁ。オークに占領されたら多少は協力的にしないと生き残れないかもしれないし、エルフィンドが解放してくれたらエルフィンドにつきなおすけど、オークに協力していたんだぜアイツ……と密告されて生き埋めにされてしまったり。裏切ったり、裏切られたり……なんともまぁと目を背けたくなる。
戦争が禍根を残すのは当然と言えば当然なんだけど、こうやっていたるところに傷が生まれてゆくんだなぁと。
戦争と言うもののいろんな側面を描き出してくれますね、この作品は。
ドワーフ隊長の外伝
最前線の部隊まで銃の調査に来ただけのドワーフ技術者が、ひょんなことから指揮官になってしまって敵を防ぐ。
いやー、魅力的なエピソードだ。これだけで1本の小説になりそうじゃないですか。
そんなエピソードをさくっとこんなショートショートで描いてしまうのも贅沢だ。
まとめ
ここまで苦戦や小部隊の全滅はあっても大軍団本軍の大ピンチとかまではなかったオルクセンが、ついに味わう辛酸苦戦の日々。第三軍は撤退を余儀なくされ、第一軍はなんとあわや王のいる本陣まで落とされそうになる大ピンチにまでなろうとは。
いやー、終始手に汗握らされる展開、非常に読み応えある巻でした。
さぁ、続く6巻はいったいどんな戦いが描かれるのか。
逆襲に出たディネルースたちの活躍に期待しちゃいます。
ところで、随所に出てくる描写でいよいよこのオルクセンという小説……オルクセン世界で描かれた『オルクセン王国史』と言う書籍と思われる文章が、どうやらこのベレリアント戦争のさらに未来の、“世界大戦”と思われる時代……よりもさらに先の、もしかしたら我々の世界における“現代”に書かれた書籍であるっぽいことがわかってきましたね。
ああ、だから「近代」と表現されてるのかと。
もしかしたらこの本はオルクセン世界の司馬遼太郎のような人が書いた小説だったりするのかも?とか想像させられちゃいます。
とすると、いったいこののち、どんな時代が訪れたんだろうなぁと。
長命魔族のグスタフやディネルースたちはそんな現代まで生きているのでしょうか。
生きていたとしたら、どんな風に世界大戦の時代や、戦後の時代、そして現代を生きて、どんなふうに見て、それを受け取ったのだろうかと。
もしかしたら今現在、スマホの時代も生きていて、お酒とタバコを楽しみながらTwitterを楽しんでたりするんじゃないかなとか、そんな風に妄想が膨らんじゃいます。
そうだったら楽しいな~なんて。
ああ、そうか、分かりました!
酒樽先生こと樽見先生の正体こそがグスタフなのか!
そうだったのかー!
#4月になったのでフォロワーさんに自己紹介しようぜ
— 酒樽 蔵之介 (@KulasanM) 2026年4月3日
日本のライトノベル作家です。
シリーズ累計100万部達成。
英語版とフランス語版も出ました。
ラーメンと肉と、艦船が好き。
”MAGIC AND GUNPOWDER"な作品「オルクセン王国史」をよろしくお願いいたします。#オルクセン王国史 pic.twitter.com/UnS6EiVMpQ

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