決戦は後半戦へ突入。なるか完全包囲網!
オルクセン王国史6巻の感想です。
前巻の感想
あらすじ
美しい白エルフたちの国・エルフィンドと、稀代の名君・グスタフ王率いる魔族連合国家オルクセンの、因縁の戦いが激化! 双方に数多の被害を与え、悲劇を巻き起こしながら、雌雄を決するときは、近づきつつあった。エルフィンドから逃げ延びたダークエルフ族は、ディネルースを筆頭としたオルクセン最強の《牙》として、仇敵の同族の喉元に歯を立てるが――。血湧き肉躍る異世界戦争群像劇、シリーズ第6弾!
【以下ネタバレ注意!】
- あらすじ
- アンファングリア、食い荒らす!
- 第三軍出現!
- 見切り
- 命令違反ではない
- 運命のもどかしさ
- 駆け引き
- 危機的状況
- 作戦前夜
- 橋梁爆破作戦
- 犠牲
- 女王
- 線路破壊
- 撤退のエルフィンド軍
- オルクセン内の衝突
- グスタフの思考
- 行軍
- 謎のやり取り
- 完全包囲
- 脱出行
- 脱出なるか
- まとめ
- 巻末外伝
アンファングリア、食い荒らす!
レオン・シュトラハヴィッツ将軍、よいひとだ。アンファングリアはよい上司を得たなぁ。
決してムリをさせず、ディネルースたちを心配し、ただただ生きて帰ってこいと命令する。ディネルースたちはなんともありがたい人の下につくことができたな。
かくして敵地深くに侵入することに成功したアンファングリア。
エルフィンド側にはこれに対抗できる余裕などろくになく、やりたい放題に食い荒らすことに成功。
兵站をやられたお返しとばかりにエルフィンド側の兵站重要拠点を破壊できたのは痛快です。
しかし、ちょっと順調すぎてこのあとが怖くなってくるな~。
みんな、生きて帰れよ!
第三軍出現!
なるほど、杓子定規な基準で兵站を計算してたから「兵站がなくなる!」と慌てていただけで、実はまだ七日分もあったのか!
無理すりゃあ全然いける物資量だし、いま無理しないでいつするのって時でもあるし。ましてや今は決戦の時。
ここをしっかり見極めたシュヴェリーンはさすがだし、善い配剤だったなと。
見切り
エルフィンドのアルウィン市長コリンディエル、なかなかの人だなぁ。
たしかに抵抗したところで街や市長の立場ではもうどうこうできるものでもない。戦争の趨勢もここまで見えてしまえば、あとは戦後にいかに生き延びるか、街の存続を考えたらオルクセンに協力するのが賢明ですわ。
簡単な判断ではないだろうし、白エルフからの目もこのあと怖いものがあるけれど、こうやって重要な決断のできる人がエルフィンドにまだいてよかったなぁと。
命令違反ではない
なるほど、
「第三軍は兵站線の再構築を企図し、軍を集結させよ」
という遠回しな命令文だからシュヴェーリンは違反してないのかw
集結地点までは命令されてないんですものね。
面白いな~。
「撤退せよ」と後ろ向きな言葉を婉曲にした官僚的表現が、シュヴェーリンに付け入るスキをもたらし、大逆転の好機を作り出す。
まさに運命のいたずら。歴史って面白いな~って感じさせてくれます。
運命のもどかしさ
イーダフェルト市を落とした第七師団長グロスタール中将と、第一師団長マントイフェル中将。
かたやすぐに脳溢血で没してしまい、かたや戦後、昇進直前に参謀の指示を聞かず判定で敗れ、予備役へ。
人生とはうまくゆかないものだなぁ。
この、勝利してハッピーとはいかないもどかしさ。このあと描かれたブロン中将もそうですね。
戦争に勝って、みんなそのあと幸せに暮らしました、とはならない歯がゆさがとてもリアリティを感じさせてくれる。ビターな現実味があります。
駆け引き
オルクセン憲兵グラウ中佐とエルフのモリウェン警部のやり取り。
バディ物の刑事ドラマが始まったのかと思いきや、緊張感ある腹の探りあい、駆け引きが始まってスパイ映画みたいなことになってて楽しかったです。
グラウ中佐を主人公にした外伝とかやっても楽しそうじゃないですか。
戦争を乗り越え、いずれバディものになったりする展開希望(笑)。
危機的状況
イーダフェルト陥落後のオルクセン。さすがのオルクセンの兵站も限界を超え、惨憺たる有様だ。
でも略奪までは行ってないのがさすがですって。
ジャガイモばかり3日で9キロも食べたとか、まだ後世の笑い話で済む話だ。
しかし、やはりどんなに準備万端に整えても、様々な知恵と技術を集めて優れた兵站体制を作り出しても、限界と言うのはあっけなく来てしまうものなんだなぁ。
作戦前夜
橋梁爆破作戦直前の、アンファングリアのダークエルフたちのドラマあれこれ。
愛馬との別れ。熱い友情関係。人間らしい彼女たちの息づかいが伝わってきて、みんな無事に帰ってきてくれと祈るばかり。
橋梁爆破作戦
敵は少数だけど、レンガ塀がブ厚くって中々に粘る。これは攻め手としては敵の増援が来ないか焦ってくるなぁ。
そしてやはり到着したエルフィンド増援部隊。
橋梁上に仕掛けた爆薬に、負傷した将兵2人がその場に残って点火するという悲劇。
かっこつけすぎだよ君たち~。胸が締め付けられつつグッと熱くなる。よくぞやってくれた。
「勇敢なるオルクセン騎兵二名、ここに眠る」
橋のたもとに埋葬し、ちゃんと扱ってくれたエルフィンドの指揮官さん、よい人だ。
犠牲
やはり多くの犠牲が出てしまったか。
馬の犠牲になるというのはやはり悲しいなぁ。馬には戦争はわからないですもの。これはただただ悲しいです。
騎兵という兵科がいずれ終わるということは、こうやって悲しく死んでゆく馬がいなくなるという意味では喜ばしいことだとも感じます。
そしてもちろん、死んでいったダークエルフたちにも心が痛む。
よく働いてくれた。
せめて自分たちの故郷の地で死ぬことができたことが彼女たちの慰めになってほしい。
女王
そうだった。エルフィンド側は女王が出てきちゃってたんだ。こりゃあ大変だ。
政府との会議で苦労するエルフィンドのクーランディア元帥。
ことここに至ってまだまだのらりくらりと考えている政府閣僚たちがなんとも歯がゆいばかり。
いっそのこと元帥が独裁権をもぎ取っちゃえばいいのにとか思ってしまう。ついてくる将兵はめっちゃ多いんじゃないかな。
線路破壊
エルフィンド側もオルクセンの線路を破壊。
橋梁爆破作戦によって敵兵站線、撤退および増援ルートに致命的なダメージを与えたアンファングリアに対して、エルフィンド側はオルクセンの線路を爆破しても1日で復旧されてしまうというこの対比。
もちろん河川にかかった橋梁と普通の線路では比較できないですが、場当たり的な対応、準備不足が如実に出ている感じがあります。
撤退のエルフィンド軍
オルクセン軍に食いつかれながら撤退するエルフィンド。
苦しいなぁ。糧秣や弾薬は貴重だから捨てて行けず、援護射撃も弾がもったいないからロクにできないって。そんななかで撤退戦をノロノロと。
輜重兵たちを守って歩兵たちが殿をやって犠牲になってゆくのも心が痛い。
なんともぐったりしてしまう話だ。
エルフィンド、なにもかもがうまくいかないなぁ。
そして一部隊の勝手な撤退が周囲の崩壊を招いてしまうって。
なんとも惨たらしい。
統制の利かなくなった軍はもはや軍ではない。烏合の衆となればもはや崩壊。
エルフィンドの敗北はもう目前かと思えてくる。ここから踏ん張るのはよほどのことでもなければムリだろう。
オルクセン内の衝突
総軍司令部と第五軍団司令部参謀たちの衝突。
オルクセンだって一枚岩ではないことがまた面白さを生んでいます。グスタフがここまで推し進めてきたオルクセンといえど、完璧には程遠い。むしろ完璧な国などありませんね。
人間らしいミスやすれ違い、激突しながら前に進んでいるんだなーと感じさせてくれます。
グスタフの思考
グスタフが考えるエルフィンド支配。
白エルフは
自尊心が高く、個別意識に溢れ、まるでそれだけで行動しているのだという顔をしながら、何か縋りつくものを求め続けているような。
というのはなんともねじくれて厄介な連中だ。なんだか現代人の一部の人達にも通じそうであまり他人事とは思えませんが。
白エルフってのは案外現代人的なのかもしれないな~。
戦争指揮は参謀たちに任せ、自らはこの後のことを考え続けるグスタフ。
何処まで考えてるんだろうなこの王は。
要は、支配者として失態を演じなければいいのだ。
とは、なんともまぁ大変なことをカラリと言ってくれますわ。
王なんて仕事、頼まれたってやりたくはないなぁ。
つくづく大変なお仕事だ。
行軍
戦争とは歩くことか~。行軍の大変さを丁寧に、いろんなエピソードを交えて描きだすこのパートも好きです。とても共感ができる。
戦闘もしなきゃいけないのに早寝早起きして食事の準備や後片付けにおわれる調理部隊とかホント大変そう。
泡を吹いて倒れる馬のなんとも悲しいこと。
関節リウマチを押して先頭を歩き、宿をとるやバッタリ倒れて無言になる将軍もいたり、その過酷っぷりがヒシヒシと伝わって来ます。
謎のやり取り
これはエルフたちを愛した三代目女王と当時のエルフたちのやりとりかな。
転生者であったらしい三代目女王。エルフを愛し、さまざまな改革を行ってきた、言ってみればエルフにとってのグスタフでもあったのだろうけど、その愛は一面的でありすぎて、エルフたちの自尊心を誤った方向に肥大化させてしまったようにしか思えない。
女王としては良かれと思ってやったことなんだろうけども、それが今日の悲劇と惨劇を生み出していると考えると何とも皮肉で哀しい話。
いったいどんな人だったんだろう。
完全包囲
ついに完成したディアネン市の完全包囲。
ディアネン市では事ここにいたっても責任追及って。なんともバカらしい。
それがなんになるのか。ほんとどうしょうもないな白エルフたちは。
オルクセンも兵站がまだまだ苦しいなぁ。進撃してれば弾を使うし、止まれば周辺から接収できる糧秣も飼い葉もすぐ尽きる。いたしかゆしだ。オルクセンの優れた兵站制度がなければとっくになにもかも崩壊してたかもしれない。
第三軍団後方を苦しめたカランウェン中将の最期。
ディネルースへ伝えてほしかった言葉は伝わらなかったか。
中将の、どうしてエルフィンドはこんなことになってしまったのかと嘆く言葉がじつに悲しい。
脱出行
エルフィンド軍ディアネン市脱出行。
なんだかこういう時はエルフィンドのほうを応援してしまうなぁ。
エルフィンド政府が脱出行直前に訓示をたれようとした、なんていう実に迷惑きわまりない話も効果的で、ベルナミア中将たちを余計に応援したくなる。そういった意味でエルフィンド政府はいい憎まれ役だ。
その脱出行の突破口として狙われるのは、またも後備第一旅団か!
リヴィル湖畔の戦いに続き、大変な目に遭う役回りなんですねぇ。なんとかこちらも生き延びてほしい。
みんな死ぬな!
脱出なるか
アンファングリアの黒殿が後備第一旅団の救援に行きやすいよう、目前の敵に猛攻撃を開始するシュヴェリーン元帥。さすがの采配だ。直接救援に行くことだけが救援行動ではない。これも立派な援護だ。
あの一発も撃ち返せず轟沈したエルフィンドの艦の船乗りたちが陸戦で活躍する。これまたなんだか熱い話。
ここを最後とばかり、死力を尽くしたような激烈な攻撃。エルフィンド軍、すごい勢いでオルクセンを圧倒!
この終盤にきてエルフィンドがここまでやるとは思わなかった。完全包囲が完成して、てっきりあとは一方的に終わるものとばかり思ってました。
エルフ女王、脱出なるかどうか。これは分からなくなったてきましたね~。
最後の最後まで気を抜けない。
まとめ
徐々に見えて来たエルフィンド国内事情。
浸透作戦は失敗に終わり、押しまくられ、完全包囲までされて、それでもまだまだ諦めない。
この巻は、なんだかエルフィンドのことも思わず応援したくなるという不思議な巻でありました。
激しさを増す戦いはいよいよ決着の時が近いようですが、彼らにいったいどんな結末が訪れるのか、7巻の発売がとても待ち遠しいです。
巻末外伝
エルフィンド旗艦リョースタに乗っていたグリンデルという少尉候補生の伝説。
リョースタと共に沈み、記録にものこってない候補生か。
リョースタだけじゃない、エルフィンドという国そのものが滅びるとき、グリンデル候補生と同じように記録から失われていった人の行いが、きっとたくさんったのだろうなと。そしてその歌声を、だれかがかろうじて聞いて語り継いでゆく伝説となっていったりするのだろうなと。
国が滅びるということは、きっとそういうことなのだろうなと思わされます。

(つづく)
